いつ出会いの場を設けるか、どうやって資質を試してやろうか、さっそく考えを巡らせていると知らず口元が緩んでいたことに気付く。

 まだ出会ってすらいない相手に期待でもしているのか?

 静寂を取り戻した部屋でオルフェは贈られた姿映しを眺める。鏡の前に手をかざし、説明された通り軽く撫でるような仕草をすれば映る姿が変わった。
 一映しだけではメレ様の魅力は伝わらないから――とか何とか言われて違う場面も送られていたことを思い出す。だから先に言っておく。けっして知り合いでも何でもない女の姿映しを眺める趣味があるわけではない。

 オルフェは思考を中断せざるを得なかった。

 やけに饒舌になっていないか?

 口では他人に負けないつもりだが必要のない場面ではさらりと受け流す主義だ。それを必死になって心中でも弁解するとは――

「まさか、な」

 見惚れたなどあり得ない。
 それなのに考えるほど胸が躍る。どうやらこの相手には少なからず興味を引かれているようだ。

「会うのが楽しみだぜ、メレディアナ」

 これだけは素直に認めても良いだろう。
 伯爵がまだ見ぬ魔女に焦がれている頃、何も知らぬ魔女は夢の中にいた。