とはいえ釣り合いの取れない外見ではない。勝気な瞳からは意志の強そうな印象を受けるが、それでいて瞳は甘いピンク色。勇ましいのか可愛いのか判断に困った。
 結論を言えば控えめに表現しても美人の部類に入る。そこまで考え息を呑んでいたオルフェは己を戒めた。

 自分は誰だ?
 伯爵家当主オルフェリゼ・イヴァンが見目だけで伴侶を選ぶなど馬鹿げている。

「……手短に紹介を頼もうか。その女性が俺に相応しいか見定めたい。眼に叶えば嫁にもらってもいいぜ」

「話しはわかった。少し待て、代表と繋げよう」

 本当に少しだった。
 今度は別の、少年とも少女とも判断し難い子どもが浮かび上がる。

「お初にお目にかかります。メレ様を幸せにし隊代表ノネットです。一番の使い魔で、人間風に言えば側近だと思ってください」

「オルフェリゼ・イヴァン。伯爵家の長男だ」

 名乗られた手前、同じように自己紹介をする。後に思い返せば何をやっているのかと呆れなくもないやり取りだった。

「ほほう、家柄良しというやつですね。我が主も伯爵家の出身ですし、釣り合いがとれますね」

「なるほど、伯爵令嬢か……。ところで彼女は俺にとって有益か?」

「と言いますと?」

「俺は家族を大切にしている。仲良くやってくれないと困るし、ある程度自分の身は自分で守れると助かる。なおかつ伯爵夫人として相応の振る舞いを要求したい。知識と常識は備えて当然だが、時に度胸も必要だ。あとは――」

「まだあるんですか?」

「俺を裏切らないことが大前提だ。そして貴族連中だけでなく、民からも愛される人であってほしい。それと――」

「まだあるんですかぁー」

 呆れかえる相手に向けてオルフェはこれで最後だと前置く。

「そこそこの愛情を注げるほどには可愛げがあると、なお良い」

「それは難題ですね。でも……」

 にやりと鏡の中で唇が歪められる。

「僕らのメレ様をなめないでいただきたい!」

 きりっとした表情が鏡の向こうで言い切った。

 そこまで言われては実物を拝むのも一興、是非にと返せば作戦会議の日時を告げられる。それは深夜と呼べる時間帯だった。なんでも本人には秘密裏に話を進めたいらしい。いわく、計画が露見すれば実行までに握り潰されるというので、ますますどんな相手か見極めに困った。