最強の魔女と策士な伯爵~魔法のランプをめぐる攻防~

「その割に貴方、楽しそうに見えるけれど」

「私もメレ様を幸せにし隊のメンバーですから」

「どこまで手広いの謎の組織!」

 このままでは最後まで謎の組織とオルフェの思う壺。まず落ち着こう。メレは自らの主張を告げるべく頭を振った。

「確認したいのだけど。……つまり貴方はわたくしを愛していて、生涯を共にする妻に望んでいると。わたくしに伯爵夫人になることを望むのかしら?」

「一言一句、違いない」

「魔女であるわたくしに永遠の愛を誓えるというの?」

「もちろんだ」

 先ほどの答えとなんら変わりない。

「わたくし、貴方より長く生きているのよ」

「それがどうした?」

「それがどうしたですって!? わ、わたくし……百年生きているのよ!」

「それがどうした」

 メレにとっては一世一代の告白だった。それすらも変わらぬ口調が返ってくる。

「貴方もいずれ老いを忘れた女を疎む。家族ですら、そうだったもの……」

 言葉で言うほど簡単なことではないとメレは知っていた。

「それは違う。彼はお前を疎んではいない」

「随分と知った風に言ってくれるのね」

(何も知らないくせに)

「俺が家族に挨拶もしていない間抜けと思うのか?」

「家族……」

 それが示す相手はメレにとって一人しか残っていない。
 メレは瞬時にオルフェの胸倉を掴み上げていた。

「弟に何をしたの!?」

 たとえ嫌われていようと大切な弟に危害を加えられたのなら誰であろうと許すつもりはなかった。

「人聞きの悪いことを言うな。ご挨拶に伺って結婚の許しをもらった。あとは、むしろ協力してもらったくらいだ」

 宥めるようにオルフェが肩に手を置けば首を傾げるしかない。

「心良く姉上の好物を教えてくれたぜ。味見役まで引き受けてくれた」

 それはつまりパンケーキのことか。確かにあの味を知っている人間は少ない。どうして気付かなかったのだろう。

「だって、わたくし……嫌われているとばかり……」

 だからこそ弟の存在を失念していた。

「誤解だろ。義弟君が言ってたぜ。自分は姉の孤独を知りもせず傷付けてしまったと、後悔してたよ。だからせめて影からでも幸せを願いたいと協力してくれたんだ」

 義弟? 

(ねえまさか義弟って言った?)