コンコン。


白鳥先輩が優しくノックをするが、出てこない。


コンコン。


もう1度ノックをするものの返事さえもない。



「紗彩ちゃん呼びかけてみて」


「でも...」


「なんだかんだ言って紗彩ちゃんにかまってもらいたいんだよ」


「私じゃなくてカノジョさんに来て説得して頂いた方ががいいんじゃないんでしょうか?」


「カノジョはカノジョ。紗彩ちゃんは紗彩ちゃん。同じ女子でも使い分ける。それは女子が男子にするのと同じでしょう?」



そうだ。


私は悪魔くんの実験台だったんだ。


確かにカノジョとは違うポジションで、私は彼に選ばれた?ってことかな。


仕方ない。


ここまで来たんだから話し合うしかないでしょ。



「あの、お休み中すみません。朱鷺田紗彩です。少しお話ししたいのですが...」



と、その時。


がしゃっ。


扉が開いた。



「いるなら居るって最初から言え」


「ごめんねえ。やっぱり俺じゃダメなんだね」


「白鳥先輩は尊敬してるんでこんな汚い部屋入れられませんよ」


「ふふっ。そうかい。別に入れてもらっても構わないんだけどね。ま、取り敢えず紗彩ちゃんを苛めないでしっかり仲良くなってね。じゃあ俺はこれで」



白鳥先輩が去っていくのを名残惜しく見つめていると、強引に腕を引っ張られ、中に入れられた。



「いつまでも突っ立ってんじゃねえよ」


「ごめんなさい」


「ここ座れ」



なんだ、至って普通の部屋じゃん。


ちょっと黒が多いから暗めだけど、ある程度整理整頓されてるし、ベッドの上も散らかっていない。


ただひとつ気になったのはお菓子の残骸。


私は既製のお菓子はあまり食べたことないから珍しい。


焼き菓子はすべて三上さんの手作りだったから。