本当に好きだった。こんなにも人を好きになることは、この先一生ないだろうとさえ思った。
 言葉や仕草の一つ一つ、ちょっとした表情の変化、笑い声、髪から香る石鹸の匂い…
思い出すと息が苦しくなる。まるで肺の中に、炭酸でも入ってるみたいに。
 ーー椿。高校一年の夏。原因不明で失踪した彼女のことを、未だ引きずっていた翔太。あれから一週間。彼女の部屋から交換日記の空白に新しいメッセージを見つけた。それは間違いなく、椿の文字だった。

  

   「タイムリミットまで50時間」