藍色の夜


その上できっと、私のその言葉になんの違和感もなかったと思う。

だって彼は人の感情の機微に敏感だから。

私が彼の美点として先程あげたそれは、時に私を傷付けた。

私が彼に「好き」と伝えようとすると、その空気を察して、絶対にその先を言わせようとはしなかったから。

それでも、まだ彼の隣にいたかった頃の私は、そのことをフラれるよりも幾分も幸せだと思った。
虚像でも、ほんの一瞬だけでも、夢を見させてくれて嬉しかった。