「あの...その...ごめんなさい」



お願いします。


何事もありませんように。


目をつぶり、ただ祈る。



「あのさ、おれにぶつかったの、お前だろ」



はいぃ?


一体何のこと?


ぽかんとしていると、私の顔の横で壁を叩かれた。



「とぼけてんじゃねえ。お前はこの世の終わりみてえな顔しておれに突進してきやがったんだ。忘れたとは言わせねえよ」



もしかして...数日前の...。


あの黒づくめの...。


あの時は謝ったのに舌打ちされたんだった。


そして今はこの状態。


いつまでやる気なんだろ?


この体勢キツくないのかな。



「人がベッドから落ちただけでバカデカイ声だして叫びやがって。あの後なぁ、お前の声が耳から離れなくて眠れなくなったんだからな。マジ迷惑。しかもさっきは風呂場に不法侵入しようとしたな?」



浴室にいたのもカラスくんだったの?



「ふ、不法侵入じゃありません!11時を過ぎてたから......」



ん?


あのあのあの...。


私...何されちゃってるのーー?!


呼吸が止まる。


時が止まる。


感じる熱。


脈が上がる...。


ちょっと待って。


これって、


これって、


これって、


き、き、キスぅ?!