あの日の青に、君だけがいない

柚の声が、遠くで聞こえる気がした。


そのくせその声は私の体の奥深くに冷たい衝撃を走らせた。


近くにいるのに。


手を伸ばせば、柚の背中に届くのに。


まるで世界が違うかのように、柚が遠い。


私の世界は雨粒のついた窓みたいに滲んで見える。


落ちそうになる空は青、冷たい芝生は萌黄、私のランニングシューズが赤で、柚のは黄色。


それから、それから、それから────







初めて気がついた、この初恋は何色だったんだろう。


色の三原色は混ぜると黒くなって、光の三原色は混ぜると白くなるというけれど、私の世界の色たちは滲むだけで、どんな色にもならなかった。