あの日の青に、君だけがいない




「やっぱり久しぶりに走るとキツイな」


大きく吐いた息に乗せて、柚がそう言った。


受験のせいで半年ほど体を動かしていなかったから、体は随分と重たかった。


今も思い切りよく投げやった手足の先に、じんわりとした疲労が巡っている気がする。


「なまっちゃってるから取り戻さないと」


「そうだな、ふっくらしたし」


含み笑いの柚をじっとりと横目で睨む。


太ったんじゃなくて筋肉が落ちただけだと言いたいけれど、実際に体重は2kg増えていた。


対して柚は引退前とそう変わっていない。


ちょくちょく体を動かしていたんだろうか。


「なんだよ、ふっくらって言ってやったんだから優しさだろ。それとも太ったって言えばよかった?」


「そういうことじゃない」


「りこはすぐ不機嫌になる。……変わらないな」


柚は変な声を絞り出しながら体を起こして、空に染まった川面を眺める。


「一言余計。そういうことを言うからいつまで経っても彼女が出来ないんだよ」