「俺だって努力してるよ」

「でも、桃田さんはこんな卑怯な真似しないです」

嘘をついて私を連れてきて、羨む相手を陥れてようなんてことはしない。

「そんなこと言って、俺を余計逆上させたいの?」

「や、やだっ」

カヤノさんに顎をグイッと掴まれる。

「そんなに震えて俺が怖い?」

怖い。
助けて…桃田さん。

「も、桃田さん…」

「名前を呼んだってあいつは来ないよ」

桃田さんっ!お願い助けて!

「おい、カヤノ、早く撮影再開するぞ!早くブラウス脱がせろ」

カメラマンの人がそう言うけど、今更気づいたって遅いのかも。
これは普通の雑誌の撮影じゃないって。

馬鹿だ私。
本当にこの人の言う通りノコノコ付いてきてしまって、本当に馬鹿だ。

でも、桃田さんは絶対に助けに来てくれる。
さっき、鞄の中の緊急通報のSOSのボタンを押した。
 
桃田さん…早くきて!

私は目をギュッと閉じて、心の中で何度も何度も桃田さんの名前を呼ぶ。

「悪い、今日は中止な」
そう言ったカヤノさんは、私の上から退いた。

「おい、カヤノ!何勝手に決めてんだよ!」
カメラマンの人たちはカヤノさんに対して怒り始める。

「アクアの社長の女だから、裸撮って脅せば金になるって言ったのお前だろ?」

そんな企みがあったとは知らずに私は本当に何やってるんだろう。

「中止ったら中止だ!」

「お前、ふざけてんのか!お前がやらねぇんなら俺らだけでやるわ」

そう言って、男のひとりが私の上へと乗ってこようとして、それをカヤノさんが助けてくれる。

「逃げろ」
カヤノさんは3人の男の人たちに殴られながらそう言ってくれた。

私は鞄を持って玄関の方まで行き鍵を開けていると、後ろから男の人に抱きつかれるように引っ張らる。

「いやっ、やだ!」

部屋へ戻らされそうになっていると玄関の扉がバンッと勢いよく開けられた。

桃田さんっ!!