「一度だけでいいから頼めないかな?雑誌の撮影だし、適当に笑ってくれていたらいいから。それに、恥ずかしい話だけど、経営があまりうまく行ってなくてね。助けてほしいんだ」

「一度だけなら」

困っているように見えて、私は承諾をした。

そしてカヤノさんにマンションの部屋へと連れて行かれる。

「ここで、撮影するんですか?」

「そうだよ。もうカメラマンとかも来ているから」

そう言われて部屋に入ると、男の人が3人もいてカメラマンなどの準備をしているようだった。

本当にこんなところで雑誌の撮影をするんだろうか?

もっとスタジオみたいなところをイメージしていたんだけど、普通のマンションにベッドが置いてあって、その周りにライトとかがセットされてはいるけど。

「じゃ、早速ブレザーを脱いでベッドに座ってくれる」

「は、はい」

私は言われた通りにベッドに座ると、写真を何枚も撮り始めた。

「じゃ、リボンを外してシャツのボタンを開けて」

カヤノさんに要求されるまま答えていたけど、やっぱり何かおかしさを感じる。

「あ、あのすみません。私、そろそろ帰らないと」

そう言って鞄を手に持つと、腕を掴まれてベッドに勢いよく倒された。

「そんなに警戒しないでよ、撮影するだけだって言ってるでしょ」

「やっ…」

「ノコノコ付いてくるって馬鹿でしょ?怪しいと思わなかったの?」

私を上から見下ろしてそう言ってくるカヤノさんは、さっきまでとは目つきが違う。

「大学の時から桃田が気に食わないんだよね。俺も大学生で起業したけど、あいつだけ成功しちゃって」

それで私にこんな事を?

「なんでいつもあいつばかり!」

「も、桃田さんはすごく努力してます」

雑誌とかでは“若き天才”と言われていたりもするけど、すごく努力をしている。

遅くまで仕事をしているし、休みの日だって仕事をしている。

私と会う時間だって、無理しないと作れないほどに。