「華ちゃん、上がって来ないでどうしたの?」

いつまで経っても私が上がっていかないから、桃田さんが降りてきてくれたんだ。

「私、何も考えずに制服で来たりしてごめんなさい」

「え?」

「私みたいな子どもが桃田さんの彼女だって思われたら迷惑ですよね」

そう言うと、会社の前だと言うのに桃田さんに抱きしめられた。

「誰かが俺がロリコンだって言ってるのでも聞いた?」

「え?」

桃田さん知ってたの?
会社の人たちに噂されてるの。

「俺は別に気にしないけど?」

「でもっ」

「それに俺はロリコンじゃなくて、華コンだよ?」

華コン?
なにそれ…桃田さんは私の不安を一気に吹き飛ばしてくれる。


「社長!会社の前でいつまで抱き合ってるんですか!!」

そうだった!ここは会社の前だったんだ!
マキノさん言われるまで、気づかなかった。

桃田さんから離れようとすると、ギュッと力を入れられて離れられない。

「も、桃田さん?」

「どうせなら見せつけよう!」

通り過ぎる人も、会社の人たちにもジロジロと見られる。

「恥ずかしいです」

そう言っても、桃田さんは腕の力を緩めてくれそうにない。

「社長、いい加減にしてください。華さんに嫌われますよ」

マキノさんが呆れてそう言うと、桃田さんはすぐに腕を離した。

「俺のこと嫌になった?」

「ま、まさか!嫌いになんてなりません」

そんなことを聞く桃田さんを可愛いと思った。

いつも私のことを可愛いって言ってくれるけど、今日は桃田さんの方が可愛いと思う。

「じゃ、俺の部屋にいこうか」

そう言って桃田さんに差し出された手を握って、会社の中へ入った。

会社の中へ入ると、視線を感じコソコソと何か言われているのを感じる。

だけど、桃田さんが手をギュッと握ってくれているから気にせずにいられる。