桃の華〜溺愛イケメン社長〜

「いえ、ちゃんとお見送りしないと社長が心配されますので」

私のことはすごく心配してくれるのに、私には心配すらさせてくれない。

「最近、新しいプロジェクトで社長は更に多忙になりました。今回の出張も休む時間もほとんどなく、今日も午前中に帰ってきて、少し休んでから仕事をすればいいのにそのまま仕事をするし、無理しすぎなんです」

出張から帰ったら私と会う約束をしていたから、桃田さんは休まずにそのまま仕事をしたんだ。

それなのに私は会えて嬉しくて、仕事の邪魔をしてるなんて気づかずに馬鹿だ。

「ごめんなさいっ!私のせいですね」

「いえ、それは…」

「桃田さんに無理しないよう伝えてください!それでは失礼しますっ!」

やって来たエレベーターに逃げるように1人で乗り込んだ。

桃田さんに頼りにされずに情けないよね。

だけど、本当にこのまま帰っていいの?
大好きな桃田さんが苦しんでるのに置いてなんて帰れないよ。

私は再びエレベーターで最上階まで戻った。

そして、社長室をノックするとマキノさんが出てきた。

「あ、あの、私…」

私が話し出すと、マキノさんが部屋から出てきて扉を閉める。

「どうされましたか?」

「桃田さんのそばに居させて下さい。お願いします」
そう言って、頭を下げる。

「頭を上げてください」
マキノさんのそう言われ頭を上げる。

「私、全然ダメで情けないですけど、一生懸命看病します。だから、そばに居させて下さい」

「社長は弱っているところを華さんに見られたくないんだと思います」

それで、さっき私に帰るように言ったんだ。

「それでもそばに居たいんです。私、彼女ですから」

楽しいことは一緒に分け合って、悲しいときは慰め合って、辛いときは助け合う。
私は、それが恋人同士だと思う。

「では、後はお願いします。何かあったら呼んで下さい」

「ありがとうございますっ」

マキノさんはそう言って、エレベーターの方へと去っていった。