「おはよ、華ちゃん」

何度目かのコールの後、優しい桃田さんの声が聞こえてきた。

「桃田さん、寝てしまってごめんなさい」

「華ちゃんの寝顔可愛かったから、気にしなくていいよ」

あ、桃田さんに寝顔を見られちゃったんだ。
変な顔じゃなかったらいいけど。

「あの、桃田さん、おばあちゃんに旅行駄目だって言われましたか?」

「2人で外泊は駄目だって言われちゃったよ。高校卒業まで我慢かな」

「ごめんなさい」

桃田さんと旅行行きたかったな。

「日帰りはお許しもらってるから、今度海に行こう」

ガッカリしたのは束の間で、桃田さんと海に行けると思うと急に元気が出てきた。

「はいっ」


桃田さんと海へ行けるなんて、楽しみすぎるよ。
水着、買いにいかなきゃ。

まだ日にちも決まっていないのに、すでにワクワクが止まらない。



電話を切り、夕飯の支度をしているおばあちゃんを手伝う。

「華は本当に小さい頃から律君が大好きね」

小さい頃のことを覚えてなくて、残念すぎるよ。

「ねぇ、おばあちゃん、子どもの頃の桃田さんってどんな感じだった?」

「大人びて、しっかりした子だったわね。そういえば、クールな子だったけど、華にだけは優しかった」

どうして覚えていないんだろう。
本当に覚えていないのが、悔やまれる。

「今もものすごく優しいよ」

「見てたらわかるわよ。今日も華の寝顔を何枚も撮っていたし」

え?恥ずかしすぎる。

「帰られる時も華を起こそうとしたら、ここ数日悩んでて疲れてるだろうから寝かせてあげてほしいって言ってたわ」

優しすぎて、好きが増してる。
付き合い始めた頃より、何倍も何十倍も好きになってるよ。

もう、この気持ちは止まらないです。