そして、昼休み
お弁当そっちのけで私はスマホ片手に気合を入れていた。

桃田さんに初めての電話だよ。
考えただけでもドキドキする。

だけど、仕事の邪魔にならないかな?
桃田さんも昼休み中かな?

「華、緊張してるの?」

「うん。彼氏に電話するって緊張するね」

「私、また余計なこと言ったよね。さっきの無しにして。華が好きになった人なら大丈夫だよ」

「ううん!私、セリナに桃田さんを紹介したいし」

何度目かのコールのあと、桃田さんは電話に出てくれた。
桃田さんの声を聞いただけで、更に胸が高鳴る。

「も、もしもし、華です」

「どうしたの?華ちゃん」

また私の名前を呼んでくれる。
やっぱり昨日のは夢じゃなかったんだ。

「今、大丈夫ですか?」

「大丈夫だよ」

仕事中に電話をかけたら迷惑なんじゃないかと心配だったけど、桃田さんの優しい声を聞いて迷惑がられていないようで良かった。

「あの、次いつ会えますか?友だちを紹介したくて」

「今日、学校まで迎えに行くよ。友だちと待っていて」

まさかこんなにすぐにOKしてもらえるなんて思ってもいなかった。

桃田さんとの電話を切って、セリナに今日の放課後だと言うと何故かセリナも緊張しだした。


放課後
セリナと校門を出ると、桃田さんの車が止まっていた。

車に近づいて行くと、運転席から桃田さんが降りてきた。

「華ちゃん、お疲れさま」

「桃田さん、急にごめんなさい」

「華ちゃんから連絡きて嬉しいよ」

桃田さんはそう言って、私の頭を撫でてくる。

「こちらが華ちゃんの友だちだね」

「友だちのセリナです」

「はじめまして、華ちゃんの彼氏の桃田律です」

私の彼氏だとはっきりと言う桃田の言葉で、本当にそうなんだと少し自信が湧いてきた。

「2人とも時間が大丈夫なら、甘いものでも食べに行こうか」

「はい」

今日はバイトもないし、時間は大丈夫。
桃田さんと少しでも一緒にいたい。

「セリナちゃん、どうぞ」

桃田さんが後部座席の扉を開けてくれて、セリナが乗り込む。
その後に私も乗り込もうとすると、桃田さんに腕を掴まれる。

「華ちゃんは、俺の横」

そう言って後部座席のドアを閉め、助手席のドアを開けてくれる。
私は助手席に乗り込み、運転席にやってきた桃田さんは私のシートベルトを当たり前のように締めてくれる。

「ありがとうございます」