「律、いるのはわかってるんだから、あまり手こずらせるなよ」

「何しに来たんだよ?金ならちゃんと払ってるだろ」

玄関から桃田さんとお父さんさんの言い争っている声が聞こえる。

「お前、刺されたんだって?」

「誰から聞いたんだよ」

「こんな父親でも息子の情報くらい入るさ。上がらせてもらうぞ」

桃田さんが引き止めているのに、お父さんは入ってきて、私を見つけて見てくる。

「は、はじめまして!和泉華です!桃田さんとお付き合いさせて頂いてますっ」

自己紹介をすると、お父さんはテーブルまでやって来て、桃田さんの食べかけのパンを食べた。

「律の彼女?若いな」

やっぱり何処となく桃田さんとお父さんはにている。

でも、雰囲気が全然違いすぎる気がする。

「これやるから帰ってくれ」

桃田さんはそう言って、テーブルの上にお金を置いた。

「また、来るよ」

お父さんはお金を手に取り帰って行った。

お父さんが来るまであんなに優しく笑顔を見せてくれていた桃田さんの表情が曇ってしまってる。

桃田さんとお父さんとの関係性があまり良くないのはわかったけど、私は桃田さんのこんな表情を見たくない。

「桃田さん、私のパンを半分どうぞ」

桃田さんのパンはお父さんに全部食べられてしまったしね。

「ありがとう、華ちゃん」

「今日はお仕事お休みですか?」

土曜日だから私は休みだけど、桃田さんは仕事だろうな。

さっきも電話かかかってきていたし。

「いや、今日は休めって秘書から電話あったよ」

「じゃ、私に出来ることないですか?掃除でも洗濯でも何でもやりますっ!」

私に出来る事ってそれくらいしかないけど、少しでも何か役に立ちたい。