「俺もね、華ちゃんの寝顔を可愛いなって見てたんだよ」

変な寝顔してなかったらいいけど。
自分じゃ自分の寝顔がどうかなんてわからないし心配だよ。

「まあ、見てただけじゃないけどね」

「え?」

「ここも、ここも、ここも…」

そう言って桃田さんは、私のおでこ、頬、鼻へと触っていく。

「ここにもキスしたよ」

そして、最後に触ったのは私の唇だった。

眠っている間にこんなにたくさんキスされたんだ。

「華ちゃんの誕生日の日には、もっと凄いとこにキスするから、覚悟しておいてね」

「覚悟、出来てます」

そう言うと、桃田さんはちょっと驚いた顔をして私に顔を近づけてくる。

「華ちゃんには敵わないな」

そう言って、桃田さんは私にキスをして、そのまま唇は首筋へと移動する。

「も、桃田さんっ…」

「このままじゃヤバイな」

桃田さんはそう言って、私から離れた。

「これ以上は止められなくなる。華ちゃん、朝ごはん食べようか」

「はい」

ベッドから出て、キッチンで一緒に朝食を作った。

作ったって言っても、私はパンを焼いてバターを塗っただけだけど。

桃田さんはと言うと、スクランブルエッグにサラダまで作ってくれた。

そして、一緒に食べていると、インターホンが鳴った。

桃田さんはモニターで確認しているけど、出る気配がなく、インターホンは何度も鳴り続ける。

もしかして、私がいるから出れないのかな。

「桃田さん、私、邪魔だったらすぐ帰ります」

「邪魔なわけないよ。親父なんだけど、会いたくないだけだよ」

桃田さんのお父さん?
確か幼少期に離婚してお母さんとは会っていないって言ってたよね。

お父さんのことは聞いたことがなかったけど、どんなお父さんなのか気になるな。

それに、会いたくないってどうしてだろう。

何度も鳴り響くインターホンが鳴り止んだと思ったら、しばらくして扉のところのインターホンと扉をドンドンと叩く音が響く。

「諦めて帰るような性格じゃないよな」

桃田さんはそう言って、玄関へと向かった。