あれから数年が経ち、私たちは魔法学校を卒業して、皆と神界で暮らし始めた。あれから、ルトは行方不明のまま。どうなったのか、私たちも分からない。

「……庚」

私は、縁側に座ってぼんやりと庭に咲く桜を眺めてる庚に話しかける。吹いた風が、胸辺りまで伸びた庚の髪を揺らした。

「……ほのか……」

庚は私の方を振り向くと、にこりと笑う。

「ライヤ様の両親、とても温かい人なんだね」

立ち上がって部屋の中に入って来た庚は、そう言って微笑んだ。

卒業した後、私たちはライヤ様の両親に会って、庚のことを話したんだ。そしたら、庚を抱き締めて泣き崩れて「良かった」って嬉しそうに笑って……。

そして、庚はライヤ様の両親と一緒に暮らすことになったんだよね。

「……」

私が微笑むと、庚の頬は赤くなった気がした。

「そうだ。今日は、皆とお花見をする約束をしてたんだよね……」

「そうだね。そろそろ行こっか」

庚の言葉に、私は頷く。そして、集合場所である葵の家に向かった。



「遅いよ。2人とも」

庭に広げられた赤い敷物の上に座ってる利希は、私たちの姿を見るなりそう言う。

「ごめん……」

庚が謝ると、れいは「とりあえず、2人とも座ってくださいな」と箸を片手に言った。