泣きながら、ルトは笑った。

「そこで意識は無くなって、気が付いたら災厄の神となってた……でもね。僕は、後悔してないよ……災厄の神になったこと。僕は……もう変われない。だったら、このまま災厄の神として……皆の敵として戦って死んだ方が良い」

そう言ってルトは刀を構え直して、庚に向かって走り出す。

……普通の神様が悪神になることがあるって、小さい頃に聞いたことがあるような気がする。でも、実際になったのはルトが初めて。

庚はルトの刀を受け止めると、ルトの刀を弾いた。ルトの刀が、円を描いて飛んでいく。

「……」

庚は、無言で刀を下ろした。それを見たルトは「僕を殺せよ……」と庚を見つめる。

「出来るわけないよ」

「どうして?僕は、災厄の神。災いを起こすことしか出来ないんだよ」

「……」

「……それでも、無理なんだね……」

無言でルトを見つめる庚を見て、ルトは刀を拾うと刀を消した。

「……何をするつもり……?」

庚は何かを察したみたいで、ルトにそう問いかける。ルトは、見た事のないほどの優しそうな笑顔をこちらに向けた。

「……皆、ありがとう……じゃあね」

その言葉を最後に、ルトは姿を消す。