『……あれは、サナミ様?』

『本当だ。あれは、お母様だ……』

葵の言葉に、私は呟いた。今のお母様より幼く見えるけど、お母様にそっくり。

お母様は、私たちの間を走っていく。私たちは、それを追いかけた。

お母様が来たのは、木に囲まれた広場。その広場に置かれた椅子に、お父様にそっくりな、髪飾りを付けた男性が座っている。

「お、紗波(さなみ)か……」

お父様はお母様の方を見ると、微笑んだ。お母様は「凪斗(なぎと)さん……」と顔を赤くして、お父様を見つめる。

『……凪斗様って、ほのかのお父さんですよね』

葵の言葉に、私は「うん」と頷いた。

「楽しそうだね?僕も混ぜてよ!」

その言葉とともに、ルトが姿を現す。ルトの髪には、髪飾りが付けられていた。それを見たお父様は、お母様の前に出る。

「お前……何のようだ?」

「……君は……確か、凪斗……だよね?」

ニコりと笑って、ルトはお父様を見た。お父様は、ルトを見据える。

「なぜ俺の名前を知っている?」

「……そっか。会うの、初めてだったよね?僕は、ルト。災厄の神だよ」

怪く笑ったルトを見て、お父様は戦闘態勢を取った。お母様は、戸惑ったような顔でお父様を見ている。