「……葵?」

庚が葵に声をかけると、葵は「何でもない」と微笑んだ。

「レイスト!お願い。封じ魔法を解いて!」

レイストはそう言った葵と目を合わせると、優しく微笑む。……今日のレイストは、何だかおかしいな。

「じゃあ、魔法を解くよ!」

レイストは片手を紙に向けて、目を閉じた。

「……ダメだ。魔法が強力で、僕の魔法が弾き返された……もう一度!」

レイストがそう言った瞬間、バシン!と音が鳴る。それを聞いたレイストは「解けたよ」と目を開けた。

「……封じ魔法が強力だったから分からなかったけど、もう1つの魔法は利希がかけた魔法なのか。何で封じ魔法をかける必要が?……封じ魔法をかけたやつ、結構やばいかも……」

レイストの呟きに、先生が「どういうこと?」と反応する。

「……本来、自分のかけた魔法に、他の魔法をかけるのは難しい。達人の称号を持つ人でも、出来る人は少ない。他人の魔法に、自分の魔法をかけるのは特にね……」

レイストは、そう言って何かを考え込んだ。

「……気が変わった。手伝うよ。利希を助けるの」

「え?」

「……僕の推測だけど、利希は何者かに捕らわれた。利希を捕らえたやつが、やばい相手かもしれないからね。今回だけ特別に協力してあげる」

この言葉、信じていいのかな……。

「……分かった。その言葉、信じるよ」