「じゃあ、何しに来たの?」

庚の問いかけに、レイストは庚に目を移す。そして、「観察しに来ただけだよ」と庚に近づいた。

「観察?」

「君たちのことを……庚くん、だっけ?君には、ちょっと眠ってもらおうかな」

レイストが言った瞬間、庚の体は崩れ落ちる。それを、咄嗟に私が受け止めた。

「結局、邪魔してるじゃん……庚をどうするつもり?」

葵の問いかけに、レイストは「そんなに心配しなくても……眠らせた以外に、何もしてないよ」と困ったように笑う。

「……じゃあ、僕はそろそろ行くよ。では、またいつか」

「待って!」

レイストに私は声をかけたけど、レイストはそのまま姿を消した。

「……」

私は、庚に目を移す。……レイストの言った通り、本当に眠ってるだけだ……。

心の中で安堵のため息をついて、私は眠ってる庚を横に抱きかかえた。

「……庚を、保健室に運んでくる」

「ほのか……俺が行こうか?」

心配そうな顔をしながら言う利希に、私は「ありがとう。でも、大丈夫」と利希に微笑む。それを見た利希の頬が、赤くなったような気がした。

「……大丈夫なら良いんだけど……」

「競技も終わったし、私が庚に付き添うよ。何があるか分からないし……」