「はぁ~……」

私の隣で、葵がため息をつく。それを見た庚は「……ため息なんか付いてどうしたの?」と問いかけた。

「体育祭、嫌~いっ!」

「あはは……」

葵の様子を見て、庚は苦笑する。多分、苦笑しか出来ないんだと思う。

今日は、私たちが楽しみにしていた体育祭。魔法学校の体育祭では、魔法が飛び交うんだって。

体育祭最初の種目は、私が出る仮装レース。途中にあるお題を引いて、そのお題に合ったものに魔法で変身してゴールする競技なんだって。

「位置について……よーい、ドン!」

先生が魔法で鳴らしたスターターピストルの音で、私たちは走り始める。

そして、中間地点まで来ると、私はお題の書かれた紙を引いた。私が引いたのは……。

『お姫様』

……お姫様って……こ、こんな感じ……?

私は、豪華な和服に身を包み、頭に髪飾りを付けた姿を想像して、杖を構えると呪文を唱える。ポンと音がして、私の目の前は一瞬だけ煙に包まれた。

「……やっぱ、これしかイメージ出来ないや……」

そう呟いて、走り始める。和服は着慣れてるから、走りくいとか無いんだよな。むしろ、走りやすいかも。

この格好のままゴールすると、先生は「……なるほど、日本のお姫様を想像したのか」と言いながら、私がかけた魔法を解いた。