庚は、そう言って微笑む。優しそうなその笑顔に、私の胸が高鳴るのを感じた。

……何だろう……この感じ。何だか、懐かしい……。

――ライヤ様。桜、綺麗ですね。

――そうだね。桜って、見てると懐かしくなってくる。この感じ、僕は好きだけどね。

不意に、あの人――ライヤ様との会話を思い出す。

そう言った時のライヤ様の笑顔と、今の庚の笑顔は全く同じ。……あれ?まさか……な……。いやいや、そんな運命的なこと、ある?

今までの庚の行動や私の感じたことなどを振り返って、私はとあることに気付いた。だけど、本当にそうなのか確信が持てない。

「話は戻るんだけどさ、閃が無事で良かった……」

利希は、そう言って安堵のため息を付く。

「……心配かけてごめん」

「風霧さんが謝る必要は無いよ?とりあえず、魔法の時計塔を出ようか」

先生の言葉に、私たちは頷いて階段を降りた。

「ねぇ……レイスト?ってやつ、どんな感じなの?」

「……えっとね。一言で言ったら、ずる賢い。私の親友を人質に取って、私の身動きを取れなくしたり、お父様をうまいこと挑発して、攻撃を単純なものにしたりとね」

私は、昔のことを思い出しながら言う。その言葉に、利希は「やばいな……」と呟いた。