私は眠れなくて、外に出る。心地良い風が、私の和服を揺らした。

ここは神界。私たち、神様が集う場所。

「……ほのか」

後ろを向くと、少し心配そうな顔のお父様が立っている。

お父様とお母様は、この神界を納めている神様なんだ。

「何ですか?」

私は、今の生活が嫌い。肩苦しい。早く結婚して、今の生活から抜け出したい。でも……。

「早く寝ろ。明日は、婚約者とご対面だ」

私は、勝手に見知らぬ神様と結婚させられるんだ。それもそれで嫌だな。

私が愛しているのは、私と結婚するのは、あの人だけなのに……。

「……もうあいつの事は、忘れろ。あいつは、もう居ないんだ」

「……出来ません。あの方を、忘れることなんて!……私は、絶対に今の婚約者なんかと、結婚しませんから!」

私が言うと、お父様は何かを考え込んだ。

「そうか……じゃあ、あいつを見つけることが出来たのなら、考え直してやる。それまでは、神界には帰ってくるなよ」

私に背を向けて、お父様は歩いてどっかに行く。

「……絶対に、見つけてやる」

私は、誰にも聞こえないような声で呟いた。



次の日。

私は、人間界にやって来た。ふわふわと、空を飛ぶ。神様は、空を飛ぶことが出来るんだよね。

私は地面に降り立つと、辺りを見渡す。

久しぶりに来るけど、何も変わってないなぁ……。