その夜。
すっごい雨が降った。

びっくりするくらい雨の音は大きくて、風はごうごうと唸っていた。

とても怖かった。
でも、僕には行かなければならないところがあったんだ。

こっそりと家を抜け出し、新田山を登った。
夜の山は本当に真っ暗で、恐ろしかった。
僕は泣きそうになった。

けど、とにかく必死になって山を駆け上った。

いつもの場所。
花のつぼみは風に千切られて飛ばされてしまったのか、
あるべきものがなくなっていた。

ショックだった。

僕は、あれが花を付けようが、枯れようがどうとも思わないけれど。
あの子はきっと悲しむ。

だから、とてもショックだったんだ。
雨がすごく降っていたけど、僕は自分が泣いているって解ったんだ。

次の日、あの子はやって来なかった。