からふる。~第6話~

あっ...。


私は目を丸くし、口をあんぐりと開け、その光景を見た。


私が飛ばした雑巾が...


黒づくめ男子の頭の上に...。



「おい」


「は、は、は、はいっ」



雑巾をこちらに投げつけ、パタンパタンと靴を鳴らして降りてくる黒づくめさん。


うわぁ。


カラスみたい。


全身黒、マスクまで黒の人、初めて見た。



なんて感心している場合ではない。


知らぬ間に半径1メートル以内にカラスはやって来ていた。


マスクを投げ捨て、一歩二歩と迫る。



「お前だな、おれの邪魔ばかりするやつは」



邪魔ばかり?


他に何したっけ?


会うのも初めてですよね?



「えっと...その...」



言葉が出る前に肩を捕まれ、そのまま壁に打ち付けられる。


そして、右手でドンッと壁を叩くカラスくん。


か、か、壁ドン。


イマドキ壁ドンって古くない?


いや、まだ需要あるか。


私は読まないからあまり知らないけれど、少女マンガっていう読み物でよく登場して世間に広まったらしい壁ドン。


普通ならドキドキするんだろうけど、


いや、ドキドキはしてるんだけど、


カッコいいからじゃなくて、


怖いからなんだけど。



「あの...その...ごめんなさい...」



謝ったのに睨み付けてくるカラスくん。


あの...私...


どうなっちゃうのぉ~?!



続く...