リセットボタン


「ねえ、蓮花。・・・会ったのね、お母さんに」
私はどきっとした。でもすぐに加賀美さんは何でもお見通しなんだなって理解した。
「ごめんなさい。」
「怒ってないわ、いつかは会う時が来るのよ。・・・どうだった?」
「その人には小さな男の子がいたの。私はもう死んだも同然なんだって。そのあと何で帰ってきたのかわからないの・・・気づいたらここにいた」
涙があふれた。
加賀美さんは優しく私を抱きしめ、静かに涙を流した。
惨めだった、とても。
自分を本気で愛してくれる肉親などいないんだって思い知らされたから。
悲しいというきもちより、憎いという気持ちが込み上げてきた。
そのあと加賀美さんは話してくれた。
宮本の性は瑞希さんのものだということ。
瑞希さんはもう他の男性と結婚していて家庭を築いているということ。
もう、会いたくないと、ここには来させないでと言われたこと。
勝手に好きだった自分の顔も知らなかった母親に崖から突き落とされた気分だった。
いや、あの人の中ではもう死んでるんだった・・・
小学生の時に親がいないといじめられ、それが原因で引きこもり、外には出なくなった。
中学生はだれも知らないところに行ったのに、理由もないままいじめられ過酷だった。
高校生になってもいじめはなくならず、『死』を考えるようになった。

――死んだら人生、リセットできるのかな。

ただ、意味なく死にたかったわけじゃない。
次の生まれ変わりに期待して、今の人生を終わらせたかった。
そもそも生まれてきた理由が私にはなかった。
『不要物』として誕生していいことなどなにもなかった。

私は決意して、ビルの上に立った。

やっと解放されるのね。
あぁ、生まれるところを間違えてしまったみたいだ。
未練などこんなところにはない。

「さようなら」