あの騎士は時間通りにやってきた。







「──で、あなたは私には何をして欲しいんですか?」







昨日と同じ小部屋に入ってすぐ、私は騎士に聞いた。





もう、一晩中ずっと考えて考えていたので、私は昨日よりかは冷静になっていたと思う。






「…そうですね。では、単刀直入に言いましょう。













兄君──ルーシェ様の演技をして、周りにはルーシェ様が亡くなったと気づかれないようにしていただきたい。」












演技?




私は少し疑問に思った。




私は庶民として育てられたけど、昨日の話を聞く限り真っ当な王家の血を引いているし、青い目も持っている。







だから、「演技」なんて言わずに、普通に私は私として即位すればいい、と思ったから。









あえてそういうのなら、何かルーシェが亡くなったと気づかれればまずいことでもあるのだろうか。







「──なにか、あるんですか? わざわざ演技をしないといけない理由が。」






騎士は少し眉をぴくりと動かした。








「実は、双子の碧花が生まれたとは公表していないのです。



歴史に類を見ない双子の碧花の事を国民が知ったら、不安が募りなにを起こすかわからない。










なので、ルーシェ様が亡くなったと他国に知れれば、次期国王がいないという状況を好機とみて、戦争を仕掛けてくる国も少なくないでしょう。」







「…そうなのですか。」




「しかし、演技と言っても実際政治を動かすのはあなたです。


他国に気づかれなければいいのですから。








それに、会議や国の重大な事態の時以外は王として動いてもらわなくて結構ですから…






それに、こんなことは申し上げにくいんですが…


あなたに王になるということに関して、拒否権はほとんどありません。」








まぁ、そりゃそうだ。

王になる資格があるのはこの国で私しかいない。



王になれ、と言われるのはもう目に見えていた事だ。






「会議などの時以外は、自由行動…ということですね?」






「ええ、まぁ……危険なことはさせられませんが。」







私は意外とこの突飛な出来事に対して負の感情は持ち合わせていなかった。




多分、退屈な毎日を変えたかったというのもあるんだろう。











「いいでしょう。その話、承諾致します。」




















こうして、私が王になることが決定したのだった。