『入学式式場』と書かれた大きな看板があったので、幸い迷いはしなかった。






「しっかし、この学校はとても広いわね…慣れるまでが大変そう。」






そう呟くと、ミラも同じことを考えていたのか、ウンウンと頷いてくる。





「わたし、迷子になるかもしれません…




まぁ 仕方ないことかもしれません。 ここは国内最大の魔法学園ですし。」





そうだ。そうだった。



私は入試を受けていない。

孤児院で育ったためこの魔法学園のことなんて知りもしなかったから、 この学園が国1番の難関校だなんて知らなかったのだ。

それが、どうして魔法学園に入学することになったかと言うと、私は元々生活において何かと魔法を使っていた。



そうしたら、街には多少私の噂が広がっていたらしい。





そして、 この魔法学園には いわゆる「スカウトマン」が存在する。







生徒のほんの数パーセントは、このスカウトマンによって見つけ出されて、簡単な実力審査をしてから入学資格を与えられるという。








時折諸事情により断るものもいるらしいが、私は断る理由もなく入学を決めたのだった。









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入学式が始まると、 眠気がじわじわと押し寄せてきた。



校長先生の話

在校生による合唱


そして、生徒会長による代表挨拶






生徒会長の男は、スラスラと挨拶を述べていく。




私は、コソッと隣にいるミラに話しかけた。







『凄い、あんなに長い文章を暗記しているなんて。』





実際、彼は紙も手元も見ず、堂々と挨拶を述べていた。



しかし、ミラはすこし首を傾けてそれを否定した。






『ルーナ様? ご存知ないのですか?

この学校の挨拶は、 ほとんどアドリブだと聞いています。

事前に指名もされずに突然当てられるので、あの人は暗記しているなんてレベルじゃなくて、もっとすごいんだと思います。』







なんということだ。


ここはそんなエリートが集まる学校なのか。







(場違い感が否めなくなってきたわ…)








私は自分が紛れもなくこの中で最も高い地位を持っていると、完全に失念していたのだろう。












感心しながら聞いていると、挨拶が終わった。





司会の人が言った。






「これで、在校生による代表挨拶を終了致します。

それでは、次に新入生代表の挨拶を行います。



新入生代表、ルーナ・­­アルナス」



















頭の中が真っ白になった。








もちろん、「ルーナ・アルナス」は私のことだ。




本名は「ルーナ・カハワート」だが、カハワート性を名乗ると身分がすぐさまバレるので偽名を使っている……







というか、そんなことはどうでも良かった。





もちろん私は自分が代表挨拶をするなんて一言も聞いていない。



在校生にアドリブを求めるのも厳しいんじゃないかと思うのに、新入生にするなんて正気か? と内心少し…いや、とても焦っている。







『ルーナ様、 そろそろ行かないと…』





うう…、なんて面倒臭い!!





でも、決まっているものはもう悩んでも仕方ない。






(──よし!!)









「はい!」







先程の生徒会長の挨拶を真似て、無礼のないように壇上まで歩いていく。




壇上に立つと、全校生徒の顔がしっかりと見えて、少し緊張してしまう。









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挨拶が終わり、席に戻るとどっと疲れが押し寄せてきた。


こんな大勢の前で話すのは初めてで、自分が何を話したのかほとんど覚えていない。







「ほんと、もう疲れた。」