翌日――放課後


竹刀を構え、相手を見る。
審判の声と同時に足を動かす。
一気に間合いをつめると、相手の竹刀を受け止め、弾き、自分の竹刀をすばやい振り下ろす。


「面っ!!」


部屋全体に、竹刀の音が響き渡る。


「一本!!」


審判をしていた顧問が白旗をあげ、声を張り上げた。



「やっぱ強いな…白鳥」

「一瞬じゃねーかよ」

「どうやったらあんな風になれるんですかね…」


周りで試合を見守っていた部員たちが感嘆の声をもらした。


零次は防具を外すと、タオルで汗を拭いた。

夏に近づく度に、練習がつらくなっていく。

大会があることもあるが、練習量よりも、気温との戦いだ。



明日から、飲み物増やすか―――



息を吐き体の力を抜く。


「お前ますます強くなってないか?」

「この頃特にスゴくね?何か特別なことしてんのか?」

「特別なことね…」


頭によぎる悪霊のこと。

毎日あれだけやれば強くなる。

だが少し違う。
剣道の実力がついたと言うより、本当の戦いを知ったのだ。


「実戦積めば嫌でも、な…」


苦笑いしながら答える。