「それより、聞いたか??」

「何を?」


何があったのか全くわからない零次は碧に尋ね返した。


「今日転校生が来るんだと」

「へぇ、ウチのクラスか?」

「あぁ」


ふーんと呟いてカバンを机におく。

何やら道隆が騒いでいる気がしたがとりあえずスルーした。


「こんな微妙な時期に珍しいな」

「そうだな」


今は5月だ。
転校生が来るには多少中途半端な時期である。


その時急に机が宙を舞った。


「お前ら!!俺を無視すん…「零次君!おはよう!!」


机を投げ飛ばした道隆を遮って、二つ結びの少女が零次に声をかけた。

机が頭に激突し倒れる道隆。
しかし、誰も見ていない。


「おはよ、東」

「今日は早いんだねっ!」

「そうか?いつもと変わんねぇけど…」

「早いよ!いつもはチャイム4分前だもんっ!」

「へぇ…よく知ってるな」

「えっえっ…あははなんでだろね!あははは…」


少女―東桜子(アズマサクラコ)はワタワタと手を左右に振りながら答えた。

桜子は二つ結びの似合う可愛くて素直な女の子だ。

多少おっちょこちょいだが、真面目で努力家で皆から好かれている。