教室に入ってきた瞬間、桜子はキョトンとした顔になった。
それもそのはず。
零次が朝早くから学校にいるからだ。
しかも……ミリヤと話していた様子。
いつの間に仲良くなったんだろう?
そんな疑問が頭をよぎる。
「桜子ちゃん、おはよう」
にっこり笑顔でミリヤが言った。
「あ、おはよう!ミリヤちゃん!!」
慌てて挨拶を返し、零次の方を向く。
「零次君、今日は早いんだね」
「たまにはな。コイツが数学教えろっていうから」
親指でミリヤを指す。
一瞬表情が固くなったが、すぐに柔らかい笑顔に戻る。
「私、数学苦手なの。
今日問題を板書しなきゃいけなかったんだけど、解けなくて……。
そしたらたまたま昨日の放課後白鳥君にあったから無理言ってお願いしたのよ」
「あ、なるほどね!」
ミリヤの説明に納得する桜子。
少し笑顔になってしまう。
「零次君、頭良いもんねっ!!」
無邪気に答える桜子。
ミリヤはホッと胸を撫で下ろした。
余計なことを考えられたら困る―――それがミリヤの考えだった。


