「もっと落ち着いて食べなさい!!」

「れいにぃ、食べ方汚い…」


母“美宇”と妹“美結”に注意されるが、かまってる暇はない。


「仕方ないだろ!ごちそうさまっ!!」

「ちょっとれいにぃ!!」

「こら、零次!!俺を視界から外すな!!」


美結と兄“啓次”を完全に無視して、歯を磨き、家を出る。



家を出て少し進むと、同じ敷地内に神社がある。

零次は夢園神社の神主の子供だった。


「よぉ、零次。いってらっしゃい」

「ん…あぁ、行ってくる」

声のしたほうを向くと父“竜次”がいた。

零次が立ち去ろうとすると、父が口を開いた。


「零次」

「なんだよ?」

「また憑いてるぞ」


思わず後ろを振り返る。

…が冗談だと気付くと、父を睨み付けた。
父はにやりと笑う。


「バ〜カ。俺が気付いたら、お前が気付かないわけないだろ」

「コノヤロ…」


どいつもこいつも…

そう思いながら、自転車を飛ばした。


零次は家族の中で最も霊感が強かった。

母、妹、跡取りである兄、現神主である父よりもはるかに強い霊感を持っていた。