先ほどまで手に掛けていた数珠がなくなっていた。
慌てて辺りを見渡す。
黒い玉のなかに一つだけ透明な大きめの玉が付いたそれは、地面に転がっていた。
痛む体を無理矢理起こし、数珠へと向かう。
だが
遅かった
数珠はすでに
化け物が高くあげた、足の下にあった。
足が真下に降りる。
破片が砕け散る。
破片の動きがスローモーションに見える。
細かい砂のようになった小さな粒でさえ、目で追うことができた。
「…うそ、だろ…」
目の前にあるのは、粉々に砕かれた数珠。
絶望と恐怖に襲われる。
タタカエナイ
マモレナイ
ナニモデキナイ…
「おい!白鳥零次!!」
ミリヤの声が響く。
「ボケッとつっ立っとくな!早く逃げろ!!死ぬぞ、お前…っ」
ミリヤの姿がまた視界から消える。
鈍い音を立て巨大な木に激突する。
「…!!荒牧っ…」
「バカ野郎っっ!!」
荒い息をたて、よろよろと立ち上がる。


