詠唱し終わった瞬間、化け物の動きがピタッと止まる。

化け物は銀色の光に包まれ苦しそうにもがいていた。


「ただの人間が…消滅呪文だと…!?」


声のしたほうに振り替える。

片手で腕の傷を押さえてたっているミリヤ。


その目は驚きに満ちあふれていた。


「お前、どこでその呪文を知った?」

「親父に習った。うち、神社だから」


神社という言葉に顔をしかめる。

この辺りにある神社といえば―――



バキッ



鈍い音がした。


はっとして見ると、化け物の腕が目に飛び込んできた。


そのまま宙に投げ飛ばされる。



「クソやろぉ……何で消えねぇんだよ…」


地面に這いつくばったまま、つぶやく。


「所詮普通の人間のあがきか……消滅呪文は、本来完全に妖怪化し、封印できなくなった悪霊に使うもの。
だが…それを解除するとは…
いったいなんなんだ?この悪霊は…」


「とにかく、もう一回……!?」


立ち上がったのは良いが、肝心の数珠が見当たらない。


「俺の数珠は…?」