突然頭に音が響いた。

だがミリヤは相変わらずぶつぶつ呟いている。


「荒牧、今――」





言葉の途中で、ミリヤの身体が視界から消えた。

慌てて、ミリヤを探す。


だが、次の瞬間―――


「ぐはっ……!」


体に衝撃が走り、投げ飛ばされる。


「今のは…くっ…!」


痛みに耐えながらなんとか立ち上がる。

かろうじて大きな怪我は無いようだが、右半身がズキズキと痛む。


「もう一体いたのか…」


ミリヤの声が聞こえる。

腕を怪我したのか、薄い桜色の布が紅く染まっている。

視線をたどると、先ほどの化け物と同じような角を持った化け物がいた。


「すぐに、終わらせる…!!」


ミリヤが弓を構えると、光でできた矢が出てきた。

化け物の角に焦点を合わせ、矢を放つ。


しかし、放つ直前に手元が揺れ、狙い通りにはいかなかった。

腕の傷はなかなか深いらしい。

ミリヤが上手く攻撃できない。

今の自分にできることは―――零次は数珠を握り締めた。


「古の断り、朝の月、昼の星、夕の太陽。
光を忘れし、迷える魂。乱れ、汚れ、傷ついた魂。
今、ここに眠れ…!」