放課後、放送室に来るように言われた私は、先に入部届を出してしまうことにした。ホームルームの後、自分の席でずっと空欄だった入部先の欄に「放送部」と書き込んで、自分の字を見つめる。
「人生初部活か…」
「なーに見てるの?あ、部活決まったんだ!どこにしたの?」
「あ、みすず。なんか放送部の先輩方に誘われて放送部に」
「へー!そうなんだ!!あの部活の先輩たちすっごい人気だから大変だねー!!」
 私の話を明らかに遮った美鈴は、いつもよりも高い声で捲し立てるように声を上げる。
 しかし私はそれよりも美鈴が口走った「人気だから大変」という言葉が気になって仕方ない。確実に私にとって良くないことを示しているような気がして。
「人気なんだ、先輩たち」
「うん、密かに校内ファンクラブもあるんだよー!私は空先輩が好きなんだぁ!」
「……空先輩」
「しぐれは誰かが好きで入部するの??」
「っ別に、そういうわけじゃないよ」
 思わず早口で弁解する。知らなかった、あの3人、そんなに人気だったんだ。てことは、同じ部活に入ることで学校中の放送部ファンを敵に回してしまうのかもしれない。
 ―――それは、美鈴も例外ではないらしい。
「そっかぁ~よかった!!じゃあ空先輩と仲良くなったら私に紹介してね!!」
「……うん、わかったよ」
 このクラス、強いてはこの学年で上手くやっていく為に美鈴に嫌われるのは得策ではない。圧力に屈するわけではなく、自分の平和を守るためにこの子の機嫌を取っておくのは必要なのだ。
「ちなみに他の部活は見たの?」
「最初からそんなに得意な部活もなくて…先輩方に誘ってもらったから入ろうかなって」
「へー、誘われたんだ!」
「うん、部員少ないからって」
「あの部活すごい人気なのに人少ないんだよね~あの3人の仲良しさに入っていけない~って!」
 私でよければいつでも話きくからね!と笑った美鈴は、やっぱりとてもいい子だなと思った。