屋上階段での出会いを果たした私たち4人は、残りのお昼休みの時間を全部使ってお互いのことについて話した。
 自己紹介をしてもらった時には二度と関わらないのに名前を知っても……と思っていたけれど、実際話して見るとこの3人の会話は聞いているだけで面白い。聞き役に徹している分にはすごく居心地のいい場所なのかもしれない。
「しぐれは部活何にするか決めたの?」
「いえ、まだ悩んでて決めてないです」
「お、これは優良物件」
「しぐれ、俺たちの一緒に放送部やろうよ」
 突然の誘いにびっくりして固まる。え、そもそも放送部なんて部活一覧にあったっけ?
「え、あ、えっと」
「しぐれ!やろう!後輩ほしかった!」
「俺後輩じゃん」
「そらくんは男じゃん女の子ほしい」
「え、みなさんしか部員いないんですか?」
 3人でひとつの部活は、校則的に不可能だった気がする。華道部ですら現役部員8名と書いてあった。
「うちの高校の放送部って変わってることで有名というか…なんか力入ってるんだよね」
「なんかラジオみたいな感じだよなぁ」
「そう!そんな感じ!で、私は1年のときからやってるんだけど、今年になったらラジオ難しい~って部員私1人になっちゃって」
「で、1人じゃ寂しい明空が『はるくん一緒にやろ~』って俺に言ってきて」
「後輩1人は欲しいんだよねって突然俺がスカウトされたってわけなんだけど」
「……もう1人後輩が欲しいから私がスカウトされてると」
 なるほど、最初っから仲良し3人組だったわけではないらしい。それにしては長年付き合いのあるように見えるくらい息が合っていて、なんというか、3人での空気が完成しきっている。ここに入っていくにはかなり勇気が必要だろう。
「……私でよければ、お願いします」
 それでも誘いを断わらなかったのは、先輩たちの醸し出す雰囲気の居心地がよかったのと、空先輩に不思議な感情を抱いていたからだと思う。