「なに?」

「いやなんでもない」

そう言いながらクシャッと後ろの髪を掻く。



変わってない癖だな。



「欲しいの?」

「え、いいのか?!」

笑うと顔がクシャッとなり、並びのいい歯を見せる。
この笑顔が物凄く大好きだった。



「いいけど、1個だけだよ!?3個しかないんだから!」

「全然いい!食べたい!」



唐揚げに一緒についていた爪楊枝で刺して、ユウキの方に持っていった。


「はい」

「サンキュー!」

渡す時に、少し手が触れた。
爪楊枝だから当たるのはしょうがないこと。でも……


「あ、ごめん!!!」


バッと手を引いたのはユウキ。




「大丈夫だよ……」

ユウキはティッシュを取り出して「ここに置いて」と言ったので、あたしは言うことを聞いてそこに置いた。


この空気。付き合っている時も味わったな。

ユウキが怖いわけじゃない。
ちゃんと好きだったし、恋人として色々したかった。
けど、あの出来事と重ねてしまう。