「えっ。」と言って翼は、少し考えると、
 
「森田記念病院?」と父の病院の名前を言う。

私は、小さく頷いた。
 
「結花里、すごいお嬢様じゃん。大丈夫?俺なんかと付き合っていて。家族に許してもらえるの?」

翼は、少し困った顔をした。

「大丈夫よ。私、もう大人だもん。それに私もう、翼君から離れるなんてできない。」

私は、翼の胸にしがみ付く。
 
「俺だって。結花里と離れるなんて、できないよ。」

翼は私を抱き締める。

そして、胸に付けた私の顔を、引き上げると
 
「でも、驚いたなあ。結花里、上品だとは思っていたけど。そこまでお嬢様だったなんて。」

と言って翼は、マジマジと私を見る。

私は首を振り、
 
「翼君に、そう思われるの、嫌で。だから言えなかったの。」と言う。
 
「俺、結花里と一緒に住む前に、結花里のご両親に、挨拶しなければって思っていたけど。どうしたらいい?」

翼の誠実な言葉が嬉しくて。私の胸は熱くなる。
 
「時期を見て、私から父に話してみるね。」

そう言って、少し涙汲む。