私を家に送った後で、聡美は翼に会って話しをしてくれた。
 
「結花里は、増渕さんの離婚が決まらないことで、すごく悩んでいるの。」

と聡美が言うと、翼は驚いたらしい。
 
「えっ。結花里、そんな事、一言も 言わなかったよ。」

と言う翼に、聡美は呆れて
 
「催促するみたいで、言えなかったんでしょう。増渕さんを責めるみたいで。」

と繰り返したらしい。
 
「俺の気持ちは、結花里って決まっているし。籍なんて、たいしたことじゃないのに。」

と言う翼に、聡美は怒った。
 
「籍なんてって言うけど、籍がどれほど大切かわかる?法律で認められているのは、結花里じゃなくて奥さんなんだよ。もし今、増渕さんが死んだら、増渕さんのお葬式をするの、奥さんで。結花里はお骨も拾えないんだよ。」

と言う聡美を、翼は驚いて見ていたらしい。そして
 
「ごめん。俺、浅はかだった。」

と聡美に謝った。
 
「結花里は、増渕さんに、そういう存在がいることに 耐えられなくなったの。自分が入籍したいからじゃないよ。」

聡美が言うと、翼は頷いた。
 
「俺、元妻にあって、ちゃんとするよ。」

と言う翼に、

「それまでは、結花里をそっとしておいてあげて。中途半端な状態で戻っても、結花里が苦しむだけだから。」

と聡美は伝えたと教えてくれた。