「私、明日 家を出るから。明日から、翼君と暮らすから。」

私の言葉に、父は顔を上げて もう一度私を見る。
 
「結花里、本気で言っているのか?」

まるで患者さんを診るような、厳しい目を私に向ける父。

今まで、一度だって 私は父にそんな目を向けられたことがない。
 
「本気よ。言っているでしょう。ずっと本気よ、私は。」

父の目に怯んで、私の声は弱くなる。
 
「駄目だ。そんな事、パパは許さない。」

静かに首を振る父の威厳に、私はおびえる。
 
「でも、もう決めたから。」

そう言って立ち上がると、私はリビングを駆け出した。