両親を疎ましいと思うことがないほど、私は、両親に愛されていたから。
 
母は、この前の父と同じように、私の隣に来て そっと肩を抱く。
 
「ママ。ママだけでも、翼君に、会って。」

私は、途切れ途切れに言う。母は
 
「ママが会って、どうするの?」

と私の顔を覗き込む。
 
「だって。翼君、悪い人じゃないし。ママに、安心してほしい。」

私の言葉に、
 
「結花里。パパは、離婚が成立してから、付き合いなさいって言っているの。わかる?増渕さんを拒否しているわけじゃないのよ。」

と母は強く言う。私は唇を噛んで俯く。
 
「何か月かかるか、知れないけど。二人が本気なら、そのくらい待てるでしょう。」

と母に言われて、私は細かく首を振る。
 
「ママもそう思うわ。だから、ママも増渕さんには 会わないわ。」