父とは、あの日以来 何も話していないけれど。

母は、私が翼と別れていないことを 知っている。
 
「結花里。パパは本気で心配しているわ。」

遅い朝食を食べている私に、母が言う。
 
「わかっているわ。でも、ママ ごめんなさい。私、彼とは 別れない。」

私が言うと、母は やれやれという顔をする。
 
「あのね、パパは 無闇に反対している訳じゃないの。最初は応援するつもりだったのよ。」

母の言葉は意外で、私は
 
「えっ?」と母を見る。
 
「最初は、増渕さんを独身だと思っていたから。美容師という職業は、不安だけど。彼が独立するなら、手伝ってもいいって言っていたの。」