「お前…、今俺の名を言ったな?」


透を後ろから押さえ込み、刀を首元に突き付けながら『トシ』は低く言った。


嗚呼、やっぱり『トシ』は土方歳三で合ってたのね。


そんなことを思いながら、当の透は自分の失態に溜息を吐くばかりだ。


どうこの場を切り抜けようか。


少し考えて、右目の眼帯に手を掛ける。


「はぁ…、これ…」


しゅるりと紐が解けて眼帯が完全に取り払われた。


右の閉じた瞼がゆっくり持ち上がる。


その瞳に映る男達は驚きに目を見張っていた。









「蒼い…目…?」


誰かが掠れた声で呟いた。


左目は薄い茶色であるのに右目は、何故かうっすらと青みを帯びていた。


「…この目があると、色んなモノが視えるんですよ。」


その蒼い目を細めて、透は笑って見せた。


尤も、そんなのは嘘っぱちだけれど。


ならば真実は?


そう、透は先の時代───すなわち"未来"からやってきたのだ───。


けれど『先の時代から来ました。』なんて言っても信じてもらえるとは思えない。


だからといって、今の発言はこのへきがん透視まがいの事が出来てしまうと言っているようなもので、これも信じて貰えるとは到底思えない。


けれどこの時代、いや、日本に碧眼なんてかなり珍しいものだ。


しかも片目のみ。


いわゆるオッドアイ、だ。


国際交流なんてほぼないこの江戸時代なら余計に珍しいものだろう。


その異端者とも言える容姿を見せてしまえばそんな信じ難い嘘っぱちも、先の時代から来たという事実よりも信じこませ易いと透は考えたのだ。


「世の中には、常識と切り離して考えなきゃ説明がつかないものだってありますよ。」


なんて、笑ってみせるがこれは生まれついてのものだ。


「………お前…、よく見せてみろ…」


刀を置いて、土方は透の身体を自分の方へ向けた。


まじまじと、動揺した瞳で透のそれを映す。