Alice in nightmare World

「まって、もう少しゆっくりしていってよ、せっかく紅茶も沸かせたのだし、もう少し話そう、もう会うことは無いのだし」

マッドハッターはそういうと紅茶を渡してくれた。

「ありがとう」

少し口をつける。まだ熱い。

「砂糖は」

「一つ」

私は角砂糖を一つ紅茶に溶かした。ポチャンと音を立て少しづつカップの中で溶けていった。スプーン掻き回す。混ざり合うのと熱を逃がす。

「マッドハッターとはもう会えないの?」

「そうだね、僕はもう満足したし、あくまで僕は想像の産物にすぎない。もう会うことはないだろうね」

「そう、なら、会いたくなったら、また想像するよ」

「ありがとう」

いい温度になった。紅茶が美味しい。一気に飲み干す。体の中に温かさが広がっていく感覚が分かる。

「そろそろ行かないと」

「行先は決まったのかい?」

「ううん、でも行かないと」

「そうか、分かった、さよならだ」

「うん、さよなら、紅茶ありがとうね」

私は部屋の壁にドアを想像した。古びたドアだ。想像通りに作り出される。この先に行かなければ次はどこに向かうのだろう。

私は勢いよくドアノブを捻った。