教室に副担任と入ると、35人の生徒の視線が釘付けでこっちを見ている。

ただ一人だけが、こちらを見ずに窓の外を見ていた。

夏恵


正面から見ると、すっかり大人びた顔をしていた。

記憶の中のキラキラした目が見えないのは気のせいだろうか?


「今年の君達の担任の朝霧智和だ」

名乗ってクラスを見回すが、夏恵はこちらを見ることもない。

忘れたのか。

少しの淋しさが胸を痛めたが、夏恵だけが自分の生徒ではない。