プリンセスストロベリーの憂鬱

「二個までな」


そう言うと、うんと元気よく頷いた。

ショーウインドーにしがみつく勢いでケーキを選ぶ夏恵を見ていると、店員に声をかけていた。


「ねぇ、あの苺は何を使ってるの?」

「とちおとめですよ」

「クリームのピンクも苺でしょ」

「はい」


夏恵が熱心に聞いているのは、ドーム型をしているケーキだ。

全体が真っ赤な苺色で、てっぺんにピンクのクリームが乗っていて中心に甘さ100パーセントと言わんばかりの苺が王冠のように鎮座している。