side 永遠



「クソッ」


何度目かの拳を受け止めたサンドバッグは

悲鳴を上げるように中身を外へと吐き出した


「あ〜ぁ、永遠、壊しちゃった〜」


倉庫の隅にぶら下がるサンドバッグは
つい最近仕入れたばかりの物

それに八つ当たりして
早々に壊した俺を笑うのは
側で見ていた大和


「フラれたか」


「子供みたいに気持ち打つけられても
応えらんないってさ」


「フッ、子供ねぇ」


「まだ分かんねぇのか」


「それがさ・・・」


椅子から立ち上がった大和は
タブレットをこちらに向けた


「・・・ん?」


「これって三ノ組の新年の挨拶じゃねぇ?」


画面には俺の家の玄関前に付く防犯カメラの映像が映し出されていて

新年の挨拶に来た傘下の組が入って行く様子が見える


「ここ」


大和が指差したところで止まった画像は
傘下である森谷組の組長と姐
その娘二人が見えた


そしてそれを大和の指が拡大していく


「・・・っ」


「だろ?」


「あぁ」


娘の一人が正体を探っている千色だった


「これを見つけてからさ〜」


楽しそうな大和は
婿入りした森谷組長の旧姓が“丸山”であることから許婚のこと

親子の関係から姉妹のこと

千色の今の付き人の話から
GWまで10年付いていた小島凱の話まで

全てが手の内に入ったと饒舌に話してくれた


「んで、更に面白いこと発見
次の日曜日、土岐の息子と顔合わせ」


ケラケラと笑う大和は
見たくもない千色の許婚の写真を見せた


「それ、潰しに行くぞ」


俺を断って他の男と会う?
そんなことがあってたまるか!

苛々する気分を


「その前に根回しな」


冷静な大和が冷ました